北海道の雄大な自然の中で、合計約1,600頭もの牛を飼育する友夢牧場様。高品質な生乳生産に加え、バイオガス発電やメロン栽培など多角的な事業を展開されています。
しかし、その大規模経営を支える電気代は月々200万円台に達し、経営における大きな課題となっていました。
本稿では、この課題解決のために自家消費型太陽光発電を導入し、持続可能な酪農経営へと舵を切った友夢牧場様の事例を深掘りします。

第1章：大規模酪農を支える膨大な電力という課題

友夢牧場が直面していたのは、牛の健康と生産性を維持するために不可欠な、膨大な電力消費とそのコストでした。

課題①：牛の健康を守るための環境管理コスト

牛は暑さに非常に弱く、デリケートな動物です。特に生まれたばかりの子牛が入る保育舎では、ピンポイントでの冷却や扇風機が必須です。一方で冬には電気ヒーターが稼働します。
約100メートルもの長さがあるメイン牛舎では、夏場の猛烈な暑さ対策として多数の扇風機が「絶対必須」とされ、牧場内で最も多くの電力を消費する箇所の一つとなっていました。
牛の健康を維持するための環境管理コストは、経営を圧迫する大きな要因でした。

課題②：生乳の品質を守るための設備電力コスト

友夢牧場様では、52頭を同時に搾乳できる大規模なミルキングパーラーが稼働しています。ミルクポンプや各種センサー、ミストなど多様な電気設備が連動しており、搾乳作業に電力は不可欠です。
さらに、搾乳された生乳は品質保持のために瞬時に約4℃まで冷却する必要があり、この冷却プロセスに莫大な電力が消費され、電気代の多くを占めていました。
これらの設備が24時間365日稼働することで、月々の電気代は200万円以上という高額なものになっていたのです。

第2章：課題解決への一手 ― 牛舎屋根を活用した自家消費型太陽光発電

高騰する電気代に直面し、友夢牧場様が着目したのが、太陽光工事屋.comを運営する株式会社アークからの提案による自家消費型太陽光発電システムの導入でした。

導入システムの概要

• 導入モデル： 自家消費型太陽光発電システム
• 設置場所： 有限会社友夢牧場 牛舎屋根（北海道・新得町）
• 太陽光パネル総出力： 202.5kW

牛舎の東向きと南向きの屋根を有効活用し、太陽光パネルを設置しました。
発電した電力はパワーコンディショナーで牧場内で使える電力に変換し、牛舎の扇風機や搾乳施設、牛乳冷却設備など、あらゆる電気需要を賄います。
発電した電気をその場で消費する「自家消費型」の仕組みで、電力会社から購入する電力量を大幅に削減し、電気代の負担軽減を目指しました。

成功のポイント：具体的な削減シミュレーションと信頼関係

導入の決め手となったのは、アークが提示した綿密な計算に基づく削減シミュレーションでした。月平均で電気代を2割から3割削減できるという具体的な試算が、導入への大きな後押しとなりました。
また、「説明内容は十分納得できた」という言葉からも、導入前の丁寧な説明によって築かれた信頼関係が、プロジェクト成功の大きな要因であったことが伺えます。

第3章：導入後の驚くべき成果 ― 大幅なコスト削減と企業の新たな価値創造

システムの導入後、友夢牧場様は目に見える形で大きな成果を上げています。

成果①：月間約60万円！圧倒的な電気代削減効果

最も顕著な成果は、電気代の大幅な削減です。晴れた日には最大で4割もの電気代削減を実現しました。
月平均で見ても、導入前に約200万円台だった電気代が、約60万円削減されました。
これは年間で換算すると約720万円ものコスト削減となり、牧場経営に計り知れないメリットをもたらしています。
友夢牧場様自身も、「やはり導入して良かったな」と、その効果を強く実感されています。

成果②：脱炭素経営への貢献という副次的メリット

経済的メリットに加え、再生可能エネルギーの導入は、友夢牧場様に「脱炭素経営」への貢献という大きな価値をもたらしました。
現代社会において、企業の環境負荷低減への取り組みは、社会からの評価に直結する重要な要素です。
「このご時世なので脱炭素も会社で取り入れられていると言える」点は、友夢牧場様が社会的な責任を果たし、持続可能な農業を推進している企業としてアピールできる大きな強みとなっています。

成果③：将来への展望と事業継続性の強化

現在のシステムは蓄電池を併設していませんが、友夢牧場様は今後の展望として、蓄電池の性能向上や価格低下が進めば、導入を検討する意向を示しています。
これにより、停電時にも牧場運営に必要な電力を確保できる可能性が広がり、災害対策など事業継続計画（BCP）の強化にも繋がります。これは、未来を見据えたさらなる経営基盤の強化と言えるでしょう。

まとめ

友夢牧場様の事例は、自家消費型太陽光発電が、単なるコスト削減策に留まらない多面的な価値をもたらすことを明確に示しています。月平均約60万円（年間720万円）という経済的メリット、脱炭素化という環境的メリット、そして将来的な事業持続性の強化に繋がっています。

友夢牧場様の先進的な取り組みは、他の大規模畜産農家にとっても、今後の経営戦略を考える上で大いに参考となる事例と言えるでしょう。これからの農業経営において、自家消費型太陽光発電の導入は、もはや必須の経営戦略と言えるかもしれません。